~人を化かす妖怪があらわれた!~
南東から北西へ向かって街を流れるソウガマエ(惣構)とクラツキ(鞍月)用水は、カキノキバタケのシンボル。せせらぎが道行く人に安らぎを与え、夏には涼しさも感じさせる。今では信じられない話だが、かつてはこの用水に化け物が棲み付き、人々を困らせたという。
サムライ(藩士)の屋敷があった頃の話。家人が夜中に雪隠(便所)で用を足していると、2歳くらいの小坊主がヌッと窓に顔を出した。「おまえが例のカワウソか!」というと、そのまま溝に飛び込み、足音を立てて逃げ去ったという。またあるとき、着物姿の女が菅笠を深く被って歩いていたので、若衆がちょっかいを出そうと声を掛けた。寄りかかってきた女の笠の中を覗くと、世にも恐ろしい顔が…。若衆は慌てて逃げたが、あわれ無残にも食い殺されてしまったという。
いずれもソウガマエの堀にいた古カワウソの仕業と伝えられている。夜の闇が今よりもずっと深かった時代、化け物の出現もむべなるかな。